【サイバーパンク2077】
CD PROJEKT REDの
奇跡的サクセスストーリー
海賊版業者から世界的ヒットメーカーまで
ポーランドの小さな輸入業者が、いかにしてウィッチャーシリーズとサイバーパンク2077で世界を席巻したのか?
彼らの成功の教訓は何だと思いますか?

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800以上のゲームオブザイヤーアワードを受賞し、全世界5000万本以上の売上を誇る超大作ウィッチャーシリーズ。これに対をなす超人気作品のサイバーパンク2077。
この2作品で1億本以上の売上を叩き出したヒットメーカーのCD PROJEKT RED。今やゲーム業界を牽引する勢いの同社ですが、元はポーランドで輸入ゲームを販売していた小さな会社だったこと、過去に倒産の危機に直面していたことをご存知でしょうか?
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CD PROJEKT RED 超解説動画
この動画を基に、さらに詳しく解説していきます
創業期の奇跡:海賊版から正規ルートへの転換

1980年代:ソビエト連邦下のポーランド
1980年代、ソビエト連邦の影響下にあったポーランドでは、ゲームソフトの流通が著しく不足していました。そんな中でもゲームを楽しんでいた少年の一人が、後にCD PROJEKT REDを創設するマーチン・イヴィンスキでした。
「もっとゲームの面白さを知ってほしい」という一心で、当時ポーランドに著作権法が存在していなかったため、高校時代にワルシャワ市場にて西洋のビデオゲームの海賊版を販売し始めます。
運命的な出会い
この時、同じようにビデオゲームを販売していたミハウ・キチンスキ氏と出会い、後に共にビジネスを始めるパートナーとなります。海賊版を販売していた2人は合法的にビジネスをしたいと考えるようになり、米国の小売業者からゲームの輸入を始めることに成功。これによりポーランドでCD-ROMゲームの最初の輸入業者になります。
1994年:CD PROJEKT設立
1990年代始めにポーランドが市場経済に移行し始めたタイミングで、2人は1994年第2四半期に資金2000ドル、友人のアパートを賃料無料のオフィスとしてCD PROJEKTを設立します。
バルダーズゲートの大成功:ローカライズによる付加価値戦略
海賊版との競争という過酷な現実
当時のポーランドは東ヨーロッパ最大のフリーマーケットと言えるほど、各国から違法に物品が流れてきており、誰でも重機を買えるほどと言われていました。そのため、ゲームはもちろん音楽など、現在では著作権に守られているものは全て海賊版が出回っており、ユーザーが正規ルートで物品を買うメリットは皆無でした。
そんな中で正規ルートでゲームを購入してもらうために、彼らは付加価値を考えます。そこで行き着いたのがゲームのローカライズでした。

1996年:ローカライズ事業開始
1996年にセブンスターズやレリクス・ロングソフトなど開発者向けに部分ローカライズをスタート。1997年には本格的なローカライゼーションを開始するまでに成長します。
そして満を持して、彼らは当時人気が高かったバルダーズゲートに目をつけ、バイオウェア社とインタープレイエンタテイメント社にコンタクトを取ることに成功します。
大勝負:莫大な費用をかけた完全ローカライズ
当時ポーランドはソビエト連邦の影響下にあったためロシア語を学ぶ人が多く、英語のバルダーズゲートはポーランドでは普及していませんでした。そこで彼らは英語版からポーランド語にテキストを翻訳し、莫大な費用をかけてキャラクターの吹き替えをポーランドの人気俳優を採用するという大きな勝負に出ます。
結果は大成功!
当時ポーランドで一般的なゲームの売上が1000本から2000本でしたが、バルダーズゲートは初日の出荷本数が1万8000本と、表現では表せない爆発的な売上となりました。
CD PROJEKT REDの系譜を辿る
ウィッチャー開発の苦難:5年間の開発地獄と克服

2002年:CD PROJEKT RED設立
ダークアライアンスの開発中止後、CD PROJEKTは開発で使用していたコードを所有していたため、いよいよ1作目のオリジナルゲーム開発に踏み切ります。彼らはポーランドで人気書籍だったアンドレイ・サプコフスキ氏の小説『ウィッチャー』に基づいたゲームの開発を作者に提案し、これに合意を得ます。
そして2002年3月6日、このゲームを開発するためにポーランド初のゲーム開発スタジオCD PROJEKT REDが設立されることになります。
開発地獄の始まり
勢いに乗ってゲーム開発が進むかと思いきや、このスタジオで作ったデモゲームに対して、アダム・バドスキ氏は「ダークアライアンスやディアブロのようなトップダウンの視点からなるRPGで、ポーランドで発売されていたモルティアを動かすゲームエンジンを使用していた」と語っています。
このデモゲームを各所に提供しましたが、ことごとく失敗に終わり、なんと1年も経たずして初回の事務所は閉鎖。スタッフは本社に移動することになり、ゲーム開発は続けられましたが、初期版は廃棄され、2003年にほぼ初期案の段階まで逆戻りし、2年近く制作作業に時間を費やすこととなります。
予算の膨張と困難な決断
このことによりゲームの予算は想定を超え、元は15人だった開発チームは100人規模に拡大。費用は2000万ズウォティ(現在の日本円に換算すると約8億円)まで膨れ上がっていました。
このことにより様々なコンテンツは予算の関係上ゲームから削除されることになりますが、キャラクターの方向性を保持し開発を進め、ポーランド語のテキストを英語に翻訳し、アメリカのゲーム販売会社であるアタリが販売することで合意します。
キャラクターたちの物語も深く知ろう
倒産危機からの復活:世界金融危機を乗り越えた執念
2007年:ウィッチャー第1作目ついに発売
開発から5年もの月日をかけ、全世界へ向けて超大作ウィッチャーシリーズの第1作目『ザ・ウィッチャー』が販売されることになります。この記念すべきウィッチャーの1作目は好調なスタートを切り、2008年10月には100万本を売り上げ、すぐに続編の開発がスタートします。
この時に『ウィッチャー2』と『ウィッチャー3』は同時にプロジェクトが立ち上がります。これはウィッチャー3では家庭用ゲーム機で動作する新たなゲームエンジンを作りたいという背景を持ちます。

フランスでのトラブル発生
バイオウェア社から提供されていたオーロラエンジンを活用し、ウィッチャー2のデモ版を制作。その仕上がりはアダム・バドスキ氏も「素晴らしい」というほどの仕上がりでした。しかし、そのデモ版の成功が何者かにリークされたせいか、パブリッシャーのアタリが『ザ・ウィッチャー:ライズ・オブ・ホワイトウルフ』の開発をCD PROJEKT REDに提案します。
マーチン・イヴィンスキ氏はこの開発には不本意でしたが、後々のコンソール進出のため合意の必要があると判断し、しぶしぶ了承しました。しかし、CD PROJEKT RED内には追加で開発するリソースはなく、フランスのワイドスクリーンゲームに協力してもらうことになりますが、これが後々大問題へと発展していくことになります。
プロジェクト中止と契約問題
5ヶ月後、フランスでトラブルが発生し、CD PROJEKTの開発者が数名現地へ行くと、驚くほど多くの問題が山積みになっているにも関わらず、そこに熱を注いで取り組む開発者は皆無でした。リオンで行われる競技会でバーティカルスライスを作る必要があり、アダム・バドスキ氏もフランスに招集され、なんとか完成し評価を得ることに成功します。
しかし、その2週間後、ワイドスクリーンゲームズ社は作品を開発するためにより多くの人手と資金、時間を要求し、さらには報酬は支払われていないと主張し始めます。マーチン・イヴィンスキ氏は「彼ら自身のスタッフより多くの報酬を支払った」として、チームは開発を中止、プロジェクトをキャンセルすることになってしまいます。
2008年:世界金融危機と倒産の危機
このことにパブリッシャーであるアタリは不満を表し、CD PROJEKTに対してゲーム基準作品の開発資金を弁済することを要求。最終的に実質債務返済目的として、北米での『ウィッチャー2』販売に関してアタリと契約書を発売前に結ぶことになります。
そして、この失敗を挽回するために開発力強化の目的で2008年にメトロポリス・ソフトウェアを買収しますが、同時に世界金融危機が発生し、CD PROJEKTは倒産の危機に瀕してしまいます。
執念の復活劇
倒産を回避するために、チームはウィッチャー3に使用予定のレッドエンジンの開発が終了したため、ウィッチャー2の開発に転用することを決定。この際にメトロポリス社の全開発を中断し、約3年半の歳月を費やし、『ウィッチャー2:王の暗殺者』が2011年に販売。このタイトルは評論家から高評価を得ることに成功し、170万本以上のセールスを記録。見事、CD PROJEKT REDは一流ゲーム開発メーカーへの仲間入りを果たすことに成功したのでした。
ウィッチャー3の世界的成功:8100万ドルの巨大プロジェクト

マルチプラットフォームへの挑戦
ウィッチャー2発売後、CD PROJEKT REDは他のタイトルと同様のクオリティでオープンワールドゲームを開発したいと考えていました。しかし、さらなる高みを目指し、PCとPS4、Xbox Oneなど第8世代と呼ばれる機器でリリースできるようにマルチプラットフォーム開発へ挑戦します。
しかし、この挑戦は前作と同様の3年半の期間で達成されることになります。開発費は8100万ドル以上に膨らみ、度重なる遅延を発生させたものの、2015年に『ウィッチャー3:ワイルドハント』リリース。
驚異的な成功
💰 売上記録
発売後6週間で600万本を販売
2015年上半期で6250万ドルの利益を生み出すことに成功
🏆 業界からの評価
2015年12月、CD PROJEKT REDはザ・ゲームアワード2015最優秀ゲーム開発企業賞を受賞
その実力を世界に確固たるものとして示しました
ウィッチャー関連作品の展開
同時期の2014年にはPC、Android、iOS向けボードゲーム『ウィッチャー:アドベンチャーゲーム』、2015年にはAndroid、iOS向けマルチプレイヤーオンラインアリーナゲームである『ウィッチャー:バトルアリーナ』をリリース。
サイバーパンク2077への挑戦:新たなフランチャイズの創造
2012年:サイバーパンク2077開発開始
さらに2012年時点からCD PROJEKT REDのもう1つの代表作であるサイバーパンク2077の開発がスタートしており、ウィッチャーシリーズの開発と並行して進められていました。これを知ると、彼らのゲームに対する妥協なき姿勢や愛情がひしひしと作品から感じ取れますよね。
チャンネルではサイバーパンクについての解説動画も上げておりますので、興味がある方は是非そちらもご覧になってみてください。

サイバーパンク2077 関連解説動画
プレイヤーファーストの理念
こうしてCD PROJEKTは世界的なメーカーへと成長を遂げることになりますが、その根幹にはポーランドでの海賊版販売経験やマーチン・イヴィンスキ氏がゲーマーであることが色濃く反映されています。
その1つの例として、日本で『ザ・ウィッチャー』が発売された際に日本語版MODが非公式で制作されていますが、これをCD PROJEKTが聞きつけ、制作者に連絡。その後公認MODになったと言われています。この際に翻訳のニュアンス調整や技術的支援を行うなど、CD PROJEKTが各国のファンを大事にする姿勢があることを示しています。
2008年:GOG.com(DRMフリー)の導入
この考えを象徴する活動として、2008年にはDRMフリーのダウンロードサービス「GOG.com(Good Old Games)」を導入。このサービスはプレイヤーが古き良きゲームを見つけるのを助けることを目的としています。これを実現するために各ソフトのライセンス問題が発生しますが、CD PROJEKTは各パブリッシャーと提携し、それを実現。社内からは「絶望的なプロジェクト」ということも囁かれていましたが、導入以来事業は順調に拡大し続けており、社内では「CD PROJEKT BLUE」の愛称で親しまれる存在となっています。
CD PROJEKT REDの世界をもっと深く楽しもう
未来への展望:プレイヤーファーストの継続

継続的なサポートとMOD文化
これらの考えを持つことから、同社の作品は二次創作を認めており、ファンアートなどを始め様々な方面でファンが独自に作品を楽しむ文化が構築されています。ウィッチャーシリーズはウィッチャー3でゲラルトの旅は終わりを告げ、新章に突入するとして新たなプロジェクト「ポラリス」を2022年に発表。
2023年に約8年にわたるウィッチャー3のアップデートが完了したと発表しましたが、先日公式MOD開発サポートツールを公開され、新作の発売まで『ウィッチャー3』をプレイヤーが楽しめるようにサポートされています。
他にはない手厚いサポート
公式からMODツールが公開され、手厚くサポートされている例は極めて少なく、CD PROJEKTのゲームとプレイヤーに対していかに情熱と愛情を持っているかを知ることができます。このウィッチャーシリーズだけではなく、サイバーパンク2077が2020年に発売され、数々のバグなどで批判を受けることになりましたが、現在2024年まで細かくアップデートを重ね、プレイヤーと向き合うことでウィッチャー3に並ぶ超大作へと進化を遂げています。
CD PROJEKTが作ったゲームなら必ず素晴らしい作品に
CD PROJEKTが作ったゲームなら必ず素晴らしい作品に仕上げてくれるという安心感は、他のメーカーにはない大きな魅力と言えるのではないでしょうか。ポーランドの輸入業者から世界的ゲームメーカーへと変貌を遂げたCD PROJEKT。現在開発が進められているのはプロジェクト「ポラリス」、サイバーパンクのプロジェクト「オリオン」など、これからも素晴らしい作品を我々の元に届けてくれることは間違いないでしょう。
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ぱずう【ゲームキャラ・ストーリー解説】
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専門分野:サイバーパンク2077、ウィッチャー3の攻略・解説
この動画の視聴回数:2,941回 | 投稿日:2024年6月7日
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